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いつもなにげに見てるし

「…ヒカル、重い」
「気のせいだろ」

 そんなわけないじゃない、思いっきり背中に寄りかかってるくせして。
 そう反論する代わりに、私は1つ、大きくため息をついた。

 張り付くような鋭い寒さから逃れるように、今日はヒカルのウチでのんびりしていて。…といっても、ヒカルは相変わらず碁盤に向かってばかりだから、私はヒカルの部屋にあった漫画をいくつか拝借して読んでいたんだけど。

 不意に、背中に固くて大きな感触と、
 同時にずしりと、重みがかかる。

「どいてよ」
「なんで」
「なんでって…」

 ヒカル、変。
 なんとなく言葉に刺があるの、長年のつきあいだもん。すぐに分るよ。

 だから私は読みかけの本を閉じて、合わさった背中越しに顔だけを出来るだけヒカルに向けて、ヒカルの逆鱗に触れないよう、静かに訊いた。
 窓が少しガタガタ鳴ってる。
 今日の風はとても元気。

「どうしたの?」

 元気無い?

 そう訊くはずだった。
 だから返って来る言葉なんでまるで予想していなかった。

「それはこっちのセリフだよ」
「え?」

 ふっと、背中にのしかかっていた重みがぬくもりと共に放れていって。
 ヒカルは向き直って、わざとらしく眉根に皺を寄せて見せた。

「こーんな顔して読む本じゃないだろ、それ」
「俺はそんなに、頼りないかよ」

 まるでふて腐れた子供のように、私をジッと見つめて言った。

 ―――それは、ヒカル。

「すごい、不意打ち」
「気付かないと思った?」
「うん、だってずっと詰め碁してたし」
「そりゃそうだけど。
 でも、ほら、俺お前の彼氏だし?」

 そうして自分を指さしながらヒカルが笑って。
 私はヒカルの胸に顔を埋めて。
 ヒカルに触れたその部分から何かが広がっていく気がした。

 それは眠りにも似た心地良く穏やかな気持ち。


===
偶にはヒカルもあかりちゃんを癒せばいいと思ったんだ。
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