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バイバイ、ヒカル


 なんて浅はかで馬鹿な考えだろう。
 それを承知で尚そうする自分は、どれだけ馬鹿だって言っても足りないくらい。
 それでも試したかった。
 賭けて、みたかった。


 ヒカルの背中をひたすらに追って、追いかけて、ただその後ろを歩いて。
 いつしか後ろを見なくなったヒカルの背中を、それでも見つめてた。
 それで良かった。
 ずっとずっと、それで良かったしそういうものだと信じてた。

 信じて、いたのに。

 少しずつ歩をゆるめる。
 ヒカルと私を隔てる距離が、少しずつ少しずつ大きくなる。
 ヒカルは変わらないスピードで前を歩いて、私は少しずつ、足が重くなったかのようにその速度を落とした。

 気付いて。
 ヒカル。
 ―――気づいて!

 ピタ、と足を止める。
 視線はヒカルの背中に留めたまま。
 だけど当の本人は、それに気づくことも無く、ただ前だけを見据えていて。
 私が立ち止まったことに気づくことも無く、曲がり角をすっと曲がった。
 その瞬間、ちらりと見えた強い瞳。
 力強くなった、その瞳。
 そこに映っているのは、きっとその前を行く、もっともっと――強い人たち。

「…ふっ……ぇっ…」

 唇を強く結ぶ。
 それでも零れる嗚咽は留められなかった。

 気づかないことなんて分かってた。
 それでももしかしたら、と。
 自分の望みに縋って賭けた。
 自分勝手な願いと、自分勝手な行動に、勝手に零れる涙がこの胸を一層切なくさせる。

 耐えられないのはこの胸の痛みか、止める術も無く溢れようとする涙にか。
 私はしゃがみこんで、おでこを抑えるようにして顔を隠した。
 途端に、頭が痛いくらいに涙が溢れて流れた。

 バカみたい、私。
 バカみたいバカみたいバカみたい。

「ヒカ、ルっ……」



 本当は分かってた。
 私のヒカルへの気持ちと、
 ヒカルの、私への気持ち。



 変化は、突然に訪れるものだから。
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